宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

10. 図書室の本、監禁

平成20年10月30日のことです。図書室の本がなくなっているということで、原告の部屋が「捜索」されました。しかし、それは口実にすぎず、実際は、10月20日に原告のかばんから「発見」された本科の特定の生徒宛のDMを題材に、本科に「原告は盗癖のある異常者である」と説明する間、原告を監禁したということなのです。

<図書室の本>
図書委員はHHと原告がつとめていました。図書室の本が、記録をつけずに持ち出されることが多々あったそうです。Oは「予科ルームで原告の同意を得てかばんを調べました。するとなくなった本(「Itと呼ばれた子」)が入っていました。(中略)原告の寮のへやにも本がないかどうか調べることになりました」と陳述しています(H22.3.9)。

一方、原告は「これ(「Itと呼ばれた子」)は他の生徒が図書ノートに記入していないことが多いことから、図書委員の私自らが貸出ノートに名前を書かないで借りた本があることを自ら話をして、謝ったときの図書です。」(H20.12.21陳述書)としており、「Itと呼ばれた子」の登場場面が異なります。

Oは、図書ノートに記入しないのは原告だけであるということ、また、その日、本が見つかったから部屋も捜索したのだ、と「捜索」の必然性を主張したいのでしょう。

原告側は、「Itと呼ばれた子」とは関係なく捜索された、つまり捜索は日常茶飯事であること(理由はなんでもいい)、また、図書ノートに記入しない生徒は他にもたくさんいたのに自分だけが捜索の対象となっていることを主張しています。特に後者は論理的に考えれば明らかです。「(原告代理人)記録を書かずに本を持ち出して、また返す同期生もいたんじゃないですか」「(O)おりませんでした」「(原)何故わかるんですか」「(O)予科生は…まず図書室に行くことがそんなに多くなかったと思いますし…」「(原)貸し出しの記録を書かないで持ち出してまた元に戻してるということであれば、分からないのではありませんか」「(O)確かに分からないと思います」(Oって、決してバカじゃないんだよな〜)

<本当に監禁なのか?>
次に、本の捜索と銘打ったこの時間が、本当に監禁だったのかどうか。原告の母親のメモとOの主張(陳述書)の内容を、時系列にまとめてみます。

  原告 O
18:00 18:25 原告が母親にメール。「HHから、図書室の本が、名前を書いてないのに無くなってるらしくて、私が盗ってるって疑ってて、私がいるところで部屋を探しに来るって言われた。」 予科ルームでHHが確認したら、原告のかばんの中に図書室の本「Itと呼ばれた子」が入っていた。部屋も調べることになった。
19:00 19:10 原告が母親にメール。「初期(前期か?)委員とO、Y、HHが調べに来る」「αに、今日この人を一人にしないでって言われた…ひどい…。」「今日の夜、お話合がある。」  
20:00 20:00〜30 寮監監視のもと、O、Y、HHと寮委員3人が部屋の隅々まで捜索。

20:30〜22:40 O、Y、HHに監禁される。

(この間(20:00〜)予科と本科で話をしている。
(以上、22:40原告から母親への電話内容)
20:00〜15 「寮監先生立ち会いのもとに図書委員のHHさん、後期委員の私(O)、Yさん、寮委員のXさんなどが、部屋を探しましたが、本はありませんでした。部屋を調べることに原告は同意していました。」「私は小包を寮長先生のところへ取りにその場を離れました。しばらくして私は戻ってきて、みんなは自分の部屋に帰って、原告と二人で話をしました。私は原告に心を開いてほしいと思っていたからです。」
21:00 21:00 原告が母親にメール。「部屋を荒らされたが何も見つからなかった。」「部屋に時間制交替制で監禁されてます。」→このメールを受けて、母親は寮監に様子を見てくれるよう電話。「寮監は何もしてくれなかった」 21時前「寮監先生がその部屋に来ました。原告の親から電話があったとのことでした。
22:00 22:40 やっと監視がとけて、原告が母親に電話する。 「午後10時半ころまで二人で話をしたと思います。」
23:00    
24:00 24:15 原告から母親へメール「今みんなで集まっていて、委員は今大変なんだから寝ないで待ってようって」  
25:00 25:15〜45 予科での話し合い。「本科は今まで予科のイジメだと思っていたが(中略)「手のつけられない困った人」と思い直した。」「αは、原告と同じ部屋の時、コードを切られていたとか、予科服をいたずらされたとか(初耳)言っていた。」(25:45原告から母親への電話の内容)

25:45お話し合いが終わり、原告は母親に電話。
 
翌日 OとYから「監禁と思わないで。親に言ったでしょ。」と言われる。  

かように、Oは監禁ではないと主張します。「原告は、親に対してみんなに監禁されたと言っていたようですが、8時(20時)15分から8時(20時)半ぐらいの間のことですし、原告がその間トイレにうがいにいきたいとみんなにいって、みんなが待ってと言ったのにトイレに行ったそうです。みんなは部屋に原告がいない状況を作るとまた盗品を持ち込んだといわれてしまうので、みんなで部屋の外に出たということを聞きました。監禁とはいえないと思います。」

これは監禁とはいえないなら、「軟禁」でしょう。同期同士で一人を部屋にとじこめて見張って、うがいに行くのもとめようとするなんて、監禁だろうが軟禁だろうが、いじめです。(しかも「盗品を持ち込んだと言われてしまう」って、そういう認識がすでにあったという…)

<心を開いてほしい!?>
Oはさらに、捜索の時間以外は「原告に心を開いてもらいたくてお話していた時間」と主張します。元々、Oは、原告の一人部屋を訪ねていくなど、コミュニケーションをはかろうとはしていたようです。「私は原告と向き合ってしゃべっていましたが、原告はあまりしゃべらず、ふと気がつくと、うたた寝をしているような様子でした。(中略)こちらも悲しくなってしまいました。」…監禁されていると思ったら、そりゃあ、心を開くどころではないのでは。

Oは、こんな本音も証言しているのです。「本科生の方にお話する話し合いの場には原告は来ないほうがいいという話にはなりましたが、最終的には、そのような目的ではなく、ただ話をしたくて、2人になりました。」本科との話し合いのためだって、認めてるやん

翌日、本科の委員3人と朝央は、原告に弁明の場を設けますが、原告は怖くて何も言えませんでした。「なにを言っても信じてもらえないとその時は思っちゃって…」(原告の母親のメモより)。かわいそうに。

<寮監は文字通り何もしない>
なお、寮監は何をしていたのでしょうか。原告母親メモには「何もしてくれなかった」、Oの主張は「寮監が部屋に来た」、とあります。つまり、寮監は部屋に様子を見に行ったが、文字通り見ただけで、原告を救うようなことは何もしなかった、ということでしょう。寮監とは名ばかりの存在なのですね。

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