宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) ポイント解説

6. 家庭的で強固な絆で結ばれた共同体の恐ろしさ

そもそも、万引きしているかもしれない、と思ったとき、なぜ彼らは自分たちで「解決」しようとしたのでしょうか。学校職員に相談しようと思わないのでしょうか。都合よく罪をねつ造したい、という悪意があることは当然推察されますが、それ以外にも、治外法権ならではの独自の価値観があるように思えてなりません。

<同期で監視>
これを、今西副校長はこのように表現します。「同期同士常に互いにフォローし合い助け合います。それによって同期同士の絆が生まれ、その絆な卒業後も何十年にわたって続く、非常に強いものとなります。」(今西陳述書 H21.1.24)いわゆる、同期の絆という美徳ですね。

なんと、この文章はこう続くのです。「またそれによって、毎日の生活のなかで、同期生の各人が今何処にいて何をしているのか、その行動は自然と把握できるようになっていくものです。」えっ、監視するのが同期の絆ですと!?

<異質なものは排除>
「96期生の生徒は、入学式、そして共同生活がすすむにつれて、全員が無事卒業を目指して一丸となっている状態でした。原告のなしたことは、その共同体にひびが入ったようなものです。委員や他の生徒たちがとった行動は、そのひびの修復をするための行動と思われます。」「委員に注意をされるし厳しく当たられるので、委員にいじめられていると主張されているのかもしれませんが、それは全く違うと思います。」(今西陳述書H21.3.12)はあ…。

そして一度この「共同体」から疎外されてしまうと、「共同体にひびができてそれを繕うという感覚よりも、共同体におけるひびは深く大きくなって、原告が共同体から飛び出してしまったような感覚ではないかと思われます。」なんですか、はみ出たほうが悪いかのような言い方です。

しかも、「被抗告人と他の予科生との関係が完全に破綻してしまった以上、他の予科生の協力は容易に得られる見込みもないのである。これは、他の予科生全員の強烈な愛校心と自尊心のなせる業であり、抗告人が強制できる性質のものではない。」(H21.3.17執行抗告状)はみ出た人をいじめるのが愛校心!?

これは、団結すると団結しっぱなし、はみ出た人を追い出してまた団結する、ということで、裏返すと、一度嘘をついたらつきとおすしかないということでもあります。「今西副校長の陳述書を見るまでもなく、同期生の団結力は凄まじく、今さら相手方(原告)の主張にくみすることが、生徒としての生活や将来にとってどのような意味を持つのかを生徒自身がよく知っている。真実を述べれば、相手方のような目に遭うことは必然であるからこそ、本当のことは言えないのである。それが本音楽学校の実態である。」(答弁書H21.6.4 原告代理人)本当のことを言ったら、自分がいじめられるもんね!

<誰かの犠牲のうえに成り立っている!?>
「清く正しく美しく」とは、グレーの人を追い出して自分たちだけ生き残るということなのでしょうか? 盗みの疑いをかけられたほうが悪いということなのでしょうか? 「清く正しく美しく」というイメージを壊さないために、少しでもほころびがあれば誰かに罪をなすりつけて追い出し、なんとかイメージだけを取り繕っているだけではないのでしょうか?

宝塚ファンが愛好してきた、家族的な絆、同期の絆、清く正しく美しく、がいじめを容認する、つまり逆の意味で使われていることがとても残念です。

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