宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) ポイント解説

3. なぜ仮処分を受け入れなかったのか

仮処分を受け入れておけば、こんなことにはならなかったのに、なぜ受け入れなかったのか。

<金コネ? 意地? 時間稼ぎ?>
そこで誰もが思いつくのが、有力なバックを持つ生徒が原告を嫌っているといった、いわゆる「金コネ」ですが、これについては、確たる証拠はありません。

また、一度原告を「盗癖がある」と安易に断定して退学処分にしてしまった手前、引っ込みがつかなくなった、という意地もあるでしょう。今更謝ったらメンツが潰れる、というわけです。

さらに、考えられる一つの原因として、とりあえず時間を稼ぎたいということもあったと思われます。96期生の卒業までは引き延ばしたい。そこまで延ばせれば、原告を二度と96期に戻せません。また、卒業までに結論が出てしまうと、大きな混乱が起きてしまう可能性がありますが、初舞台をとりあえず平穏に踏むことができれば、96期生やその親に申し開きができる、せめてそこまでは、という考え方です。実際に、原告代理人の報告会で、なんとか調停を引き延ばそうとする音楽学校側の工作があったことが明らかになっています。

<生徒を指導することができない!>
とすると、もし初舞台より前に結論が出て原告が戻ることになったらどうなっていたのでしょうか? そこが、この問題の核心なのですが、原告を学校に戻した場合に、どのように他の生徒たちを指導するか、音楽学校にはそのすべが全くなかったのではないでしょうか。

音楽学校はしきりにこう主張します。

「生徒と講師が協力してくれないから、授業を受けさせることができない。間接強制の性質ではない」

学校なんだから、生徒に指導するのは当たり前、講師と一致団結するのは当たり前、ですよね? 「できません、だから許して」なんて、裁判所に通用するのでしょうか?

もちろん裁判所は、「債務者(学校)が退学処分を正当化する事情として他の同期生、その父兄、講師らの意向を挙げることは、見方によっては、自己の指導監督責任を他者に転嫁するものともいえる。」(H21.3.31 神戸地裁決定)とあっさり却下しています。

にもかかわらず、音楽学校は「被許可抗告人(原告)に対する授業を強行すれば、音楽学校は生徒の保護者も含め混乱に陥り、平穏に授業の実施を含めた全ての業務を行うことが不可能となる。」(H21.4.20許可抗告申立書)としつこく主張。

なんと、この文章は、「仮処分を受け入れて原告を戻したら、大騒動が起きる! 自分たちはそれを平定するすべがありません!」とはっきり言っています。つまり、「授業を受けさせることなんて無理です」と主張すればするほど、自分たちの学校としての責任を放棄していることが明らかになってしまっているのです。

混乱を平定する方法を知らない。いじめをする生徒を指導する方法など、知らない。いじめられた生徒を支援する方法など、知らない。そんなこと、やったことない。とにかく原告を追いだしたい。なぜなら、それ以外の事態収拾方法を知らないから。

昨今、こどものいじめが陰湿になっている、学級崩壊が起きている、とよく言われます。いくら教育者と言えども、何もできないこともあるでしょう。しかし、音楽学校には、そもそも生徒と真剣に向き合うという基本的な姿勢がないのです。最初から「教育」を放棄しているのです。

→4へ 音楽学校は「学校」じゃない

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