宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

4. テレビ取材

平成20年8月21日、夏休み中の原告は、郷里でテレビ取材を受けました。取材にあたって音楽学校の許可を得ていなかったことなどが、あとで問題にされます。

<突然の取材>
しかし、取材は、突然のことでした。予告はなく、駐車場で車から降りたら突然カメラを向けられたのです。同じ郷里出身で、原爆で亡くなった先輩園井恵子さんの法要です。長く宝塚を支援している方から頼まれての法要出席、しかも間にOGが入っています。到底、断れません。また、原告がカメラに向かってしゃべったのは、「大先輩が広島の原爆で亡くなったことを悲しく思い、自分も宝塚で頑張っていきたい」(H20.12.29準備書面(2))という真っ当な内容で、むしろ宝塚のイメージアップになることとも言えます。

<服装のルールは曖昧かつ常識と異なる>
そのほかに問題となったのは、制服を着用し、薄化粧、髪型をリーゼントにしていなかったことでした。

これらをすすめたのは原告の親でした。一般人からすれば、当然だと思います。冠婚葬祭に学生が出席するときは制服が普通です。また、あの予科生のリーゼントは、一般人からすれば奇異です。原告代理人はKに「帰省している最中も、男役はリーゼントで髪を固めて外を歩かなければならないんですか」と突っ込んでいます。薄化粧は、「すみれ募金、発表会、修学旅行等、人前に出るときには薄化粧するのがマナーだと教えられました」(原告陳述書 H20.12.21)から、仕方ありません。

ん? 薄化粧したことが問題となったのに、原告はむしろ薄化粧しなければいけないと思っていたんですよね? 変ですね。つまり、ルールが曖昧なのです。取材に許可が必要だということも、明確には知らされていなかったそうです。これらが「生徒心得」に違反しているということを、原告は仮処分の段階で初めて知らされたほどです。→ポイント解説 8.明文化されないのに拘束力があるおかしなルール

<話し合い? つるし上げ?>
テレビの映像はテレビ局のwebページに掲載され、それを96期生が見付けて問題になりました。夏休み最終日の8月23日、Kが郷里にいる原告に電話をして、責め立てます。なんと、夜中の11時頃から1時間も、です。Kは原告に「精神科に行ったのか」と問いつめます。(「(原告代理人)その電話の中で、精神病院に行ってきたかという話もしましたか。(K)はい。」)

さらに、翌日、寮に戻った原告は、寮内生の同期全員に責められます。Kはその理由を「全員がきちんとした情報を把握できるように、原告本人になぜそのようにしてしまったのかなどの説明を受けるため」(証言)と説明しますが、寮内生は36人もいます。裁判官も「36名で話し合いの部屋という一つの部屋で、原告一人から事情を聞いたということですか。」とあえて聞いていますが、それはもう「話し合い」ではなくて「つるし上げ」ですよね。

<学校の対応は場当たり的>
学校の対応は、場当たり的です。委員から報告を受けた学校は、原告に反省文提出を求め、原告は8月27日に反省文を提出しました。事務長は、8月29日に謝罪に来た原告の母親に、「少しでも事前に言ってくれれば良かっただけですよ」「立派な反省文を出してもらっているので、もう解決済みです」(原告母親陳述書H20.12.26)と答えます。

しかし、委員たちはそれに不服で、もっと厳しい処分を求めました。「音楽学校の生徒は、この程度のことで鬼の首でも取ったように大騒ぎして原告を責め立てたり事務長に報告する程、未熟なのである。」(H20.12.29準備書面2)。

事務長は、こうした声をおさえることができなかったのでしょう。結局学校は、自分で「解決済み」と言ったくせに、退学処分の理由の一つに、テレビ取材を受けたことをあげました。「このことがあってから後も、原告に規則違反、決まりを守らない行為が多発している。」(H20.12.19答弁書)ですって。許可なく取材を受けたのはこの一回きりだし、他の規則違反もいじめでそう捏造されている(→例:洗濯機)ことを争っているのだから、理由になりません。そもそも、学校はこのテレビ映像を見ていないで、委員の報告だけで違反だと言っているのです。(「審尋での音楽学校代理人の応答からみて、音楽学校側は誰一人、この取材で原告が具体的にどのような制服の着用方法をし、髪型をし、薄化粧をしたかを現に確認していなかったことが明らかである。」(H20.12.29準備書面2))

なお、この映像を最初に見つけた96期生は誰だったのでしょうか。原告は「委員のαさんから、法要の際の取材画像はwebニュースで配信されたものを親戚が見つけたと言われました。」(H20.12.21陳述書)と主張しますが、αは否定します。「(原告代理人)これを、あなたがた予科生で一番最初に知ったのは誰ですか。(α)誰かは分かりません。(原告代理人)あなたではありませんか。 (α)私ではありません。」他の同期も否定します。「(K)そのとき、たくさん同期がいたので、その中でインターネット上にその画像が出ているらしいということになったので、確定した同期生は分かりません。」口裏を合わせているようで、怖いです。

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