宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

13. 退寮後に見つかったもの

平成20年11月8日に原告が強制送還され、職員会議で退学処分が決まったのち、学校は寮の部屋にある原告の荷物を自宅に送り返そうと、片付けを始めます。そこで学校が問題にしたことがありました。

<盗難品?>
部屋から、原告のものではないものが見付かりました。ステテコ(J)、袴下黒帯(K)、ボイスレコーダー(K)、MDテープ(R)、ダンス用下着、ハンガー、洗濯ネット、シャーペン(以上、α)、整髪ジェル(Oの名前入り)。Y、X、Mが確認したそうです。

原告はどれも全く知らないと主張します。「常識的に考えて下さい。原告は6月15日に発見されたとする物品を盗んだとして何度も責められてきたのです。そして盗難をしないようにと4階の一人部屋に移され、絶えず監視の目にさらされただけでなく、何度も寮室の徹底的な捜索がなされてきたのです。」(原告代理人 職員会議にあたっての意見書 H21.1.14)にも関わらず、発見されてこなかったものが、退寮後に突然「発見」される。つまり、誰かが仕込んだとしか考えられません。「音楽学校は、寮内に設置した防犯カメラを検証しているのであろうか。」「「物が発見された」ということではなく、窃取行為そのものを立証すべきである。」(原告代理人 準備書面(2)改訂 H20.12.29)入り放題の部屋なのですから、物を仕込むのなんて誰にだってできます。

しかも、ボイスレコーダーは水筒の中に入っていたそうです。原告は水筒を強制送還の前日の11月7日まで使っていたと主張します。強制送還は突然で、身の回りの整理すらできませんでした。つまり、急遽隠すことなんて無理なのです。

仕込みかどうかでポイントとなるのは、退寮時に部屋に鍵をかけたかどうか、また、鍵をかけたとしてもその後開けられたことがないかどうか、です。原告は、鍵をかけていないと主張(そもそも、鍵をかけてはいけない、監視された独房ですからね)。「私のロッカーや部屋には鍵をかけていませんでした。私が学校や寮を出た後で、同期生の誰かが持ち込んだ物だと思います。」(原告陳述書 H20.12.21)。

一方、樫原事務長は証言で裁判官に聞かれ、「(樫原)(退寮時に)身の回りに必要な荷物を持って出る際にもう施錠しております」「(裁判官)その施錠は原告も確認されているんですね」「(樫原)と思います」「(裁判官)思いますと言うのは、もしかしたら確認してないかもしれない」「(樫原)でも、そのときに施錠してますんで、確認してるはずです」「(裁判官)それ以来、一度も鍵は開けてないですか」「(樫原)はい」と、あやふやながらも主張。

しかし原告代理人に追究されると、「(原告代理人)証人は、毎日、その鍵を開けに行ったんですか」「(樫原)いえ、行っておりません」「(原告代理人)では、どうして、(その後)鍵を開けていないと言うことがいえるんですか」「(樫原)開ける必要がありませんし」「(原告代理人)ですから、見てないんでしょう」「(樫原)見てはおりませんけれども…」と、仮に、一度施錠したとしても、その後ずっと開いていないかは全く確認していないことが露呈

恐ろしいのは、ボイスレコーダーは、5月25日に失くなったという被害届が出ていたもので、6月15日の大捜索後に原告の部屋を撮影した際にも写っているものです。袴下黒帯も、5月17日に失くなって、Kが今西副校長に怒られたものです。そんな昔になくなったものを、原告がずっと一人部屋に隠していたと考えるのは、捜索が日常化していたことからすると、困難。となると、誰かがずーっとそれを隠し持っていて、退寮後に原告の一人部屋に仕込んだとしか考えられません。一体、誰が!?? その執念が怖すぎます!!

<ハンガーの謎>
6月15日以前に、原告が間違ってαのハンガーを使っていたことが、盗難と学校に報告されたことがありました。そのハンガーは、6月15日に大捜索があったのですから、すべてαに返却されたはずです。また、一人部屋に移動したあとも捜索がしょっちゅうあったのですから、もし間違って原告が一人部屋にαのハンガーを持っていったとしても、ハンガーは発見されているはずです。ということは、退寮後に仕込んだとしか考えられません。

……そんなにハンガーが重要なのかい!! 仕込む品にあえてハンガーを入れるということは、ハンガーがよほど重要なアイテムなのでしょうか。ハンガーを使われたことが、6月15日の大捜索の直接のきっかけだったのではないかと邪推してしまいます。

<現金>
学校は原告に荷物を送り返すと同時に、部屋に残っていたお金について、一覧表を作成して親に呈示しました。押し入れに、フィルムケースに入った500円玉が何十枚、引き出しに封筒入りの新札が何十枚、それぞれ何セット、ロッカーに茶封筒にいくら…。それは、盗品リストと同じような体裁で、さも盗んだお金だと言わんばかりです。「いかにも(原告)が他の生徒から金銭まで盗んでいたような疑いを持っているかのようです。(原告)は××(郷里)に戻されたときには3000円位しか所持していませんでしたので、お金は全部寮に置いてきたことになります。」(原告母陳述書 H20.12.26)

原告の母親は、日曜日にATMが使えないと思い込んでいたので、食料品などを宅急便で送るときに一緒に現金を送っていました。祖母や叔母からも現金がお小遣いとして送られてきていました。特に、レッスンのお礼には新札が必要だとのことで新札を持たせていたけれども、レッスンに通えるのは予科後期からなので、結局一度も使わなかったそうです。本科生からの買物(次の項目で説明します)にも新札が必要なのだそうです。また、日々使うお金を考えたら、残金には全く問題ありません。

<未使用でサイズ違いのレオタードなど>
原告の一人部屋に、たくさんのレオタードやタイツがあり、原告の自宅に返送されました(しかも袋から出して撮影して、これまたセクハラまがい)。これが「盗品だ」ということになってしまいます。

というのも、原告がそれらのうち未使用のものをメーカーNに返品しようとしたら、原告に売ったものと数やサイズが違うから返品を受け付けられない、と拒否され、そのことをメーカーが学校に密告したからなのです。メーカーは学校から「盗癖のある生徒がいる」とでも聞いていたんでしょうか??

じつは、これらは本科生に買わされたものでした。「同期生の大半がこのように、本科生から買わされています。本科生が買えと言えば、買わなければいけないと予科生は思っているのです。」「だいたいのサイズで買わされるのだそうです。」(原告母陳述書 H20.12.26)「本科生からも、レオタード2枚、ダンス用タイツ10足、バレエ用タイツ6足、制服のブラウス2枚、宝塚の舞台のチケット等を買わされていると○○(原告の名)から聞いていました」(原告母陳述書 H21.2.26)。だから、サイズもまちまちだし、未使用のままなんですね。しかし、学校は「予科生が本科生に物を買わされる」ということを全く知りませんでした。なので「ほら、やっぱり、盗品だ」と主張します。

本科生に物を買わされるというのは、αも証言で一応認めています。「(原告代理人)(チケットを)買ってくださいというようなメールが来るわけですか。」「(α)余っているので、誰か見ませんかという話があったりします。」「(原)上級生からはチケットのほかに買わされたりするものはありますか」「(優)ありません」「(原)レオタードであるとか、そういう衣服について買ってくれというふうなメールが来たりしませんか」「(優)自分が買ったもので余っていたので、もし使う人がいたら、予科の中で買う人はいませんか、という話はあったことがあります。」

原告代理人は証拠として、下記のようなメールを引用しています。(H21.3.25準備書面(3))
「例えば、以下のようなメールが送られてくる。
From:だーっち('∀'●) 11/4 α
×××さんから/象タイ一枚買ってくれる人〜!」(*象タイ=グレーの厚手のタイツのこと)

学校側は、このような習慣があることを全く知らず、原告側に「売りつけた本科生の氏名、物品、金額を教えていただきたい」と喧嘩を売るような求釈明文書を作成しています。愚かとしか言いようがありません。

「そもそも音楽学校は、原告が主張したことについて、なぜ自ら実態調査を行っていないのであろうか。このような求釈明を行うということ自体、音楽学校が生徒のことを何も知らないことを自白しているようなものである。音楽学校が生徒の実態を何も知らないし、知ろうとしないことが本件の根本的な問題である。」(H221.3.25準備書面(3))→ポイント解説 4.音楽学校は「学校」じゃない

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