宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

6. 共用スプレー

平成20年9月13日、朝の予科ルームで原告は、髪を整えようとして共用のスプレーを手にします。共用のスプレーは、鏡の前に置いてありましたが、そこにはほかの生徒がいて混んでいたので、原告は、反対側(予科ルームはけっこう広いです)の鏡にまで持って行って使おうとします。ところが、鏡にうつった自分を見て、原告は名札をつけていないことに気づきます。そこで、手にスプレーを持ったまま、かばんの中の名札を取ろうとしたとき、スプレーがかばんの中に入ってしまいました。

さて、これは盗難でしょうか?

96期の間では、原告が、誰でもするようなちょっとした間違いを起こせばそれは「盗難」だったのです。ちょうどその場面を見ていたPとJが、咎め、責めます。「これで以前の盗難事件の証拠がはっきりした」「無意識にそういうことをしてしまう」と。それを聞いた事務長も「今回のことは重く見ている」と決めつけます。

「他の生徒が盗んだ等と騒がなければ、自分ですぐに気が付いて元の位置に戻していたはずです。私は、学校の共用スプレーを使用しないように、自分で10数本持っています。今回送り返した荷物(注:退寮後に事務長が送り返した原告の荷物)を見れば学校側でもわかるはずです。」「今でもどうしてあの時、いつもは使わない共用のVO5を使ってしまったのかと後悔していますが、ただ間違えただけと、本当にそれしか言うことはありません」(H20.12.22原告陳述書より)

朝の忙しい時間、誰でも間違えることはあります。特に原告は、連日のいじめで、相当精神的に疲れていたはずです。そもそも原告は自分のVO5をたくさん持っていました。盗む動機がありません。

見咎めた二人のうちPは、証言で原告代理人とこうやりとりしています。「(原告代理人)学校側は、その落書きのスプレー(注:共用スプレーにはPが描いたイラストがある)と自分のスプレーを間違える筈が無いということを言ってるんですが、あなたもそういう風に思っていますか」「(P)はい」「(原告代理人)間違える筈が無ければ、じゃあ盗んだことになるんですか?」「(P)はい」…短絡的すぎやろー。

裁判官が、Pにナイスな突っ込みをしています。「(裁判官)一般論なんですけど、ぼうっとして、まあ、人から借りてるボールペン、自分の筆箱に入れちゃうことって無いですか?」「(P)…」「(裁判官)別に一般論なんでいいですけども」「(P)はい」

そういうことって、ありますよねえ? それなのに、退学処分の理由の一つになる…。なんという学校でしょう。仮処分で高裁の判断は「不注意に基づくもので退学処分のような重大な懲戒処分の理由にするには不相当」(H21.7.2)…当然です。

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