宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

5. 洗濯機にまつわるいろいろ

「原告が洗濯機使用のルールを守らなかったため、洗濯機使用禁止にした」というのが音楽学校側の主張です。しかし原告は、他の生徒と同じ程度のミスしかしていない、それ以外は捏造であると主張しています。これを詳しく見ていきましょう。

<複雑なルール>
まず、ルールとはどのようなものだったのでしょうか。寮委員で洗濯担当のXの陳述書(H22.3.10)から引用します。

「1.洗濯機を作業場へ持っていくときは紙袋に入れていきます」「2.作業場に着いたら、スリッパにはきかえ、電気を付けます」…正直、どうでもいいような気がしますが。

「3.洗濯機があいていればホワイトボードに名前を記入し、洗濯機があいていなければ、洗濯機の中の洗濯物をかごに入れてあげて、ホワイトボードの洗濯機の欄に記入されていた名前を乾燥機の欄に書き換えます。」「4.乾燥機が使われていると、脱水まで終わっている洗濯物を一旦預かって部屋に持ち帰りメーリングリストで流します」「5.乾燥機の使用が済んでいる洗濯物があれば、乾燥機から出して本人に届けることになっています。」

ちょっとわかりにくいのですが、どうやら、洗濯機と乾燥機それぞれに、今誰が使っているかをホワイトボードに名前を書くことで管理しているということのようです。また、洗濯や乾燥を仕込んだら作業場からは一旦離れるので(ここポイント)、後から来た人が、既に洗濯が終わっている洗濯機や乾燥機を使いたいときは、洗濯→乾燥は洗濯物の移動を代行してあげる、乾燥機があいていなければ洗濯物を持ち帰る、乾燥が終わっているものも持ち帰る、ということのようです。

ただでさえ、混乱を招きそうな難しい仕組みですね。

<無人の作業場>
作業場が無人になるということは、いくらでも悪事を働けるということです。平成20年5月3日に原告の洗濯物が本科の洗濯機やごみ箱に入っていて問題になったという事件がありましたが、予科の洗濯機と本科の洗濯機は同じ作業場にありますので、誰でも仕込めます(さらに、ごみ箱にも、というところに悪意が感じられます)。また、「(原告は)ホワイトボードの書き換えをせずに放置した」と鳳は書いていますが、原告の洗濯物を乾燥機に移動して、ホワイトボードを書き換えない、ということは誰でもできます。

誰かが、脱水機能が壊れた洗濯機で洗濯して、びしょびしょのままの洗濯物を、そのまま乾燥機に入れてしまったということもありました。これも原告のせいだとされましたが、鳳はその根拠を「ホワイトボードに原告の名前が書いてあるのを見た同期がいるからです。」としています。伝聞なところがすでにあやしいですが、ホワイトボードの書き換えなど誰でもできるし、洗濯物を乾燥機に移動することも、誰でもできます。(なお、証言によると、原告は裁判になるまでこの事件を知らなかったとのこと)

そもそも、「脱水機能が壊れている」ということは、原告には知らされていなかった可能性があります。裁判官に聞かれて鳳が証言したところによると、その伝達はメーリングリストであったとのこと。原告抜きのメーリングリストもありましたから、 伝わっていなかったかもしれません。また、寮監に伝えた後は張り紙がされたそうですが、「原告が脱水機能の壊れた洗濯機で洗濯した」とされた事件は、張り紙がされる前なのだそうです(X証言)。

さらに、「洗濯物がなくなって捜しているときに、見付かったら必ず原告の部屋にありました。」と鳳は証言しています。しかし、原告の部屋も、誰もが入ることができました。原告だけが、部屋に鍵をかけてはいけなかったからです。原告不在時に勝手に委員が「捜索」に入ることがありました。だから、誰でも仕込むことができるのです。

X証言によると、原告のミスが増えたのは、夏休み明けとの事。夏休み明けというと、テレビ取材の件で原告が激しく糾弾されたときです。「いじめ」が盛り上がって捏造が増えた、と考えることも不自然ではないでしょう。

<使用禁止を委員が決める>
さて、洗濯機の使用禁止という「ライフラインを絶つ」(原告代理人)ことは、どのように決定されたのでしょうか。禁止されたのは8月下旬、まだまだ暑い時期です。しかも、夏休みが明けてから、1週間程度しか経っていない性急さです。

こんな重要なことを決めたのは、委員たちでした。学校は関与していません。寮監にも相談していません。「委員と寮委員で原告に言いました」とXは証言します。「(原告代理人)このルールを守らない場合には洗濯機の使用を禁止するというルールはあるんですか。」「(X)いいえ。」「(原告代理人)学校の職員の方に洗濯機使用禁止をしていいかどうかということを聞かなかったんですか。」「(X)はい。」これは自治ではなく、独裁でしょう。

使用を禁止した後も、そらおそろしい仕打ちが続きます。委員たちは、原告が二駅先のコインランドリーに行くことを想定していました。しかし、二駅先には平日にはとても行けません。そこで原告は、洗面所で早朝に手洗いするしかありませんでした。大変です。にもかかわらず、同期生たちは文句を言いました。食器などを洗う少し大きめの洗面台で洗濯したので、汚い、と言うのです。「汚い」という感覚がすでに「いじめ」ですよね。シーツや体操服のような大きなものを洗面台で洗うのが無理なこともあり、原告の懇願により、日曜だけなら洗濯機で洗濯してもいい、ということになったのですが、週に一度では到底足りません。

原告と最後まで仲が良かったZが見かねて、「自分が洗濯をするとき一緒に洗濯してあげる」と申し出たのが11月の初めでした。しかし、11月6日にメールで洗濯を頼むと、洗濯の予定がないと返事が来て、翌日、αとRが「Zさんに洗濯を頼んだでしょ」とやって来ます。「失敗したら洗濯機を使わないって言ったよね」とRが詰め寄るその「失敗」とは、他人に洗濯を頼むことなのです。なんという恐怖政治。Zが洗濯を申し出たことが、なぜ委員たちに伝わってしまったのかは、わかりません。RとXが同室であることが関係しているのでしょうか。

なお、学校側(X、R含む)は、「Rが原告のぶんも洗濯してあげた」と主張していますが、原告は「洗濯してもらっていない」と主張しています。

<学校は放置>
学校はまたもや、委員たちの言っていることを聞いているだけでした。中身を吟味していません。だから「使用禁止といっても近くにコインランドリーがあって困らない。」(音楽学校答弁書H20.12.19)などと書いています。本来使えるはずの洗濯機が使えないというのに、それはないでしょう。しかもニ駅も先です。「心ない文章だと思います。」(原告陳述書 H20.12.21)本当にそうです。「生徒を寮で預かる教育機関が言うべきことではない。」(原告代理人準備書面 H20.12.22)その通りです。

樫原事務長は証言でも間抜けさを発揮しています。「(原告代理人)洗濯機を使わせてあげたらどうかというようなことを、あなたから言うことはないんですか」「(樫原)はい、それは原告さんに対しても、まず、ルールを守って、使えるような状態にしなさいと言うことを指導しましたし、生徒たちにも、ルールを守るようになったら使えるようにしてあげなさいと言うことは言っております」「(原)洗濯機を使えないのに、どうやって洗濯機のルールを守るんですか」「(樫)・・・・・」事務長はただ委員から報告を聞くだけなのでしょう。9月16日に原告の親が事務長に、洗濯機を使用できるよう改善を求めて、その場では対応を約束したのに、結局改善されませんでした(H22.3に提出された原告の母親のメモ)。

<そもそも台数が足りない>
洗濯機と乾燥機は予科本科でそれぞれ3台ずつしかありません。寮生は予科だけで36人もいます。授業中は洗濯できませんから、平日は夜7時ぐらいから就寝時までの数時間しか使えません。朝も出来なくはないですが、忙しいでしょう。洗濯って普通、短くても30分はかかりますよね。授業でたくさん汗をかく音楽学校生、できれば毎日、せめて2日に一回は洗濯したいですよね。日曜日だけじゃ全然足りません。…単純に計算しても、そもそも洗濯機の数が足りないのではないでしょうか。これでは、トラブルになって当然です。

原告は、「寮内で決められたルールを守らない予科生はたくさんいます。特に本科生が見ていなければスリッパに履き替えない生徒が多くいます。私は8月に一度だけ前述のようにボードの記入ミスとメーリングリストの報告でミスをしました。これは他の生徒もよくやるミスです。」「私が使用禁止にされてからも、様々な混乱が続いていたようです。」(原告陳述書H20.12.22)と主張しています。

要するに、最初からトラブルが頻出すること必至な洗濯機使用において、起きたトラブルをすべて原告になすりつけた、ということなのでしょう。

6. 共用スプレー へ

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