宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

8-2. 音楽学校は財布の持ち主の証言を捏造

<ちゃんと調査しない>
財布の持ち主に、音楽学校が直接連絡を取ったのは(書類に記されている通りだとすると)平成21年1月9日です。

こんなに行動が遅いのは、平成20年12月22日の神戸地裁の審尋で突っ込まれ、「伝聞に過ぎず、現場検証すら行われていない。到底刑事事件で有罪を立証するレベルに達していない」(原告代理人 準備書面(2)改訂 H20.12.29)と指摘されたからなのです。やっとこさ事務長が持ち主に電話し、平成21年1月10日付けで裁判所へ聞き取り書を提出しています。そこには、財布の持ち主の名前と住所、そして、座っていた席番、予科らしき人が隣に座っていて、一緒に財布を探してくれた、ということが書かれています。(実際には、11月14日時点ですでに警察から聞いていたと推測されるた内容ですが)

<肝心のことを書いていなかった>
さて、原告の母親は、持ち主の名前と住所を見て、直接家を訪ねて持ち主に謝罪をしたいと考えました。この勇気が吉と出ます。とりあえず、持ち主と同じ市に住む友人がいたので、同行してもらえないかと思い連絡を取りました。すると、友人がじつは持ち主と知り合いであることが判明します。なんという偶然でしょう。そこで、友人を介して、1月29日に財布の持ち主と原告の母親が会うことになりました。(暴露本では原告も同行していることになっているが誤り)

そこで、財布の持ち主の考えがわかります。「財布を盗まれたとは思っていない」「自分の財布が原因で退学処分が行われたことを聞いてない」というのです。音楽学校の主張とは、全く異なります。

2月27日午前、原告代理人と原告も、財布の持ち主と会いました。原告は、財布を直ぐに届け出なかったことを最初に謝罪し、持ち主もそれを許しました。そして、原告代理人は事実をそのまま述べてください、と事情聴取をお願いしました。その聞き取り書をすぐに作成して、午後の神戸地裁での審尋に提出しています。聞き取り書等から、持ち主の意見をまとめましょう。

・開演前にオペラグラスを借りてから客席まで走った。
・幕間に、一緒に観ていた姪が、もう一度観たいというので、午後の部のチケットを買いにチケットカウンターに行き、そこで財布がないことに気づいた。
・財布が落ちていた場所は通っていない(H21.4.30音楽学校作成の聞き取り書より)
・チケットカウンターに行くとき通ったのは、キャトルレーブ(大劇場改札横のグッズ売り場)の出入り口である。(H22.3.31原告母親の陳述書より)
・席に戻ってから(幕間)、左隣の予科生風の人も目で探してくれたようだった。
・少年課から電話があったことは不思議だった。
・警察には、オペラグラスを借りて急いで戻ったときに、財布をかばんに入れそこなったかもしれない、と話した。
・観劇中はかばんを足元に置いていた。財布を盗まれたという思いは全くない。
・観劇中に他人がかばんに手を入れることは不可能。
・樫原事務長から電話があって、写真を見たらとなりの予科生がわかるか、と聞かれた(写真は見せられていない)。
・事務長が「背は高かったか」と聞いてきたので、座っていたので分からないと答えた。(最初から原告かと疑っている!?)
・私が「隣に予科生らしい生徒が座っていた」と話したことで、その生徒に迷惑がかからないか、と事務長に聞いたら、「そんなことはありません」と答えた。
・事務長にも、財布を盗まれたとは思っていないことを話した。
・音楽学校の生徒が財布を盗んだということは聞いていない。
・学校がお金を弁償するとも聞いていない。
・音楽学校の弁護士から連絡を受けたこともない。
・私の財布を盗んだとされて、退学処分になった生徒がいると聞いて、びっくりした。警察からも学校からもそのようなことは聞いていない。
・原告と会って、隣に座っていた人とは違う人だと思った。
退学処分の理由になっているという職員会議議事録を見て、非常に心外に思う

財布の持ち主と原告の母親の知人が旧知だったということで、何らかの取引が行われたと邪推する人もいるようですが、持ち主の主張をねじまげるような音楽学校と対抗するためには、取引など一切必要ないことは論理的に明らかです。

  <音楽学校の言い訳>
その後、3月8日に樫原事務長と今西副校長が財布の持ち主に会っていますが、なぜか聞き取り書は作成していません。

そして、退学処分になったことを言わなかったのは、なんと、プライバシーに配慮したからだと言い訳しています。「学校側から第三者である(持ち主)さんに開示することは、原告のプライバシーや名誉の観点から考えて問題である、との認識」「(迷惑がかかることはありません、と答えたのは)(持ち主)さんの証言だけによって退学処分が左右されるわけではないため」「「財布を盗まれたとは思っていない」(中略)というお話は伺っていない」(H21.3.12 陳述書 樫原事務長)…自分たちの不始末を、原告や財布の持ち主に責任転嫁しているのです。

もちろん、裁判所は「財布は遺失物である可能性が高い」と判断しました。(H21.3.31 神戸地裁決定)そりゃそーです。おそらく、開演前に急いでいるときに落とした財布を誰かが拾い、現金4万円だけを抜き取って、持ち主が通っていない、全然別の場所に捨てた、というのが一番あり得ることでしょう。

<さらに捏造>
しかし、これであきらめる音楽学校ではありません。4月3日に、弁護士と樫原事務長が持ち主に会って、今度は聞き取り書を作成しています(4月30日付け)。しかし、これにも「盗まれたと思っていない」というようなことは書いてありません。隣に座っていた予科生は春野寿美礼さんや水夏希さんに似ていた(つまり原告には似ていない)、と話したことも書いてありません。それどころか、「財布がないとしたら、席だろうと思って、席に急いで戻りました。」「かばんのファスナーは、いつも閉めないので、このときも開いていました。」と、座席でかばんが倒れたり、観劇中に物を出し入れした結果、かばんから財布がこぼれ落ちて、隣席の予科生=原告がそれを盗んだ可能性があるような書き方なのです。財布の持ち主さんの主張とは全く違います。

2月27日付けの原告側の聞き取り書に「かばんに手を入れて盗むことは不可能」とあったので、今度はこぼれ落ちた説にしたいわけです。ご丁寧に、かばんが倒れた状態の写真まで撮影して提出しています。これも、財布の持ち主は「かばんが倒れても財布がこぼれ落ちない」という証明だということで撮影に了解したのに、音楽学校は全く逆の趣旨で提出しました。

4月15日付けの大阪高裁宛の保全抗告申立書でも「財布の持ち主はなくなったことに気付いたときに、オペラグラスを借りるカウンターに向かって行ったのではなく、自分の席に向かって行っている。(中略)自分の席に向かったのは、そこで失くしたと思ったからである。」と書いています。これでは、持ち主さんの考えと違いますよね? しかも「財布の持ち主は宝塚のファンで今回のことで生徒に迷惑がかからないか非常に気にしている。大変な生徒の味方で、冷静な説明ではない。」ですって。証言してくれている人、しかも自分のところの生徒が迷惑をかけた(と彼等は思っている)人に対して、失礼ではないですか?

原告代理人は、これらの内容を知り、5月11日に持ち主に知らせたところ、持ち主さんはますます心外に思いました。そこで原告代理人は再度、6月3日に聞き取り書を作成しました。「立証趣旨を聞いて私はとても驚きました。その書かれたものには、わたしの陳述書(4/30付けのもの)を出す立証趣旨は「原告が宝塚大劇場で私の左となりに座り私のカバンからこぼれ出た財布を盗むことができる状況にあった」ということだというのです。私はそんな趣旨のことを話したつもりは全くありません。」「私は宝塚側の弁護士に騙されたという思いで情けなく、かつ激しい憤りを感じています。」

にもかかわらず、財布の持ち主への尋問の際もしつこく、こぼれ落ちた説に固執。「(被告代理人井上)取った取ったっていうことなんですけども、(原告のお母)さんは、この財布が座席付近で落ちていて、それを拾ったことも退学理由になっていると説明しましたか」「(財布の持ち主)座席付近で落ちている?」「(被告代理人井上)ええ」「(財布の持ち主)そういうことはありません。」(略)「(被告代理人井上)(聞き取り書に)「私は、座席にいる間、自分のオペラグラスを財布を入れていたカバンから出して、それを使って公演を見て、その後、カバンに戻しました。」という記載があるんですけど」「(財布の持ち主)はい」「(被告代理人井上)あなたは、私とお話したときは、こういうことを話されたということでいいですね」「(財布の持ち主)えっ、舞台が終わったら戻しますから、見てそのたんびにというつもりではありません。」観劇中にオペラグラスをかばんに出し入れしたという想定なんですね。観劇したことないんでしょうか。

音楽学校側の弁護士は、弁護士資格を剥奪されるべきでしょう。盗まれたと思っていない人の証言を「盗まれたんだ」「なんで盗まれたって言わないんだ」と決め付けているわけです。しかも、自分のところの顧客ですよ? バカにするのもいい加減にしてほしいです。原告代理人は「法律家としての倫理が問われる」(答弁書H21.6.4)と糾弾しています。

これらは、裁判所の心証を悪くしました。当然です。「被害者(財布の持ち主)は、音楽学校側が作成した聞き取り書が不正確であるとの陳述書を作成していること等に照らせば、これらの記述の正確性については、反対尋問による弾劾を踏まえ慎重に検討する必要があり」(H21.7.2 大阪高裁決定)としています。

持ち主はこうも言っています。「隣の生徒さんと思った人が、どうして名乗り出てくれないのかなという思いはあります」(証言)水夏希や春野寿美礼に似ていたのは、一体、誰だったんでしょうね。

9. 携帯電話を拾った へ

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