宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) 事件の検証

2-3. 失くなったものの詳細

長くなりますが、「盗品」の中から特徴的な物を紹介します。

ドライヤー
ハンガー
ブラウス
プリント
食券
黒帯
ボイスレコーダー
MDプレーヤー
化粧水
その他

<ドライヤー>
原告が、Eのくるくるドライヤーを盗んで使っていたという件。 6月15日の大捜索のきっかけになったもので、音楽学校が盗品として真っ先にあげたものです。

αの主張では、このくるくるドライヤーを「原告は(中略)4月15日ころから6月15日まで毎朝使っていました。」(証言)となっています。

しかし、原告はこう主張します。「後でEさんのドライヤーだと言われた物は、平成20年6月の初め頃から私の鏡台のそばのコンセントに繋ぎっぱなしでした。私はいつも部屋に泊まっている誰かがそのままにしているのだと思っていました。」「朝はいつもあわただしくて、軽い気持ちで6月初め頃から繋ぎっぱなしのそのドライヤーを使っていました。」(陳述書H21.3.31 )

盗んで使ったという主張と、置いてあったから使ってしまったという主張。また、使い始めた時期も違います。

この、時期の違いが重要です。

αの主張では、「原告は、入寮当初はドライヤーを持っていませんでした。私が貸してやったり、ガイダンス期間中はBさんがリーゼントを作ってやったりしていました」(上記陳述書)その後、「入寮(4月11日)してから、二、三日後」(証言)から、Eから盗んだくるくるドライヤーを使っていた、とのこと。

しかし、原告は、そもそも普通のドライヤーを持っていたし、その後、もう一つ、くるくるドライヤーを購入したのだと主張します。「私は入寮時に小さなドライヤーを持参していますし、買物ができるようになったすぐの日曜日(平成20年4月13日)、K駅近くのショップでくるくるドライヤーを買いました。」

なぜ買い足したのか。当初は、地元で習ったリーゼントの作り方に基づいて普通のドライヤーを持参したが、入寮して初めて、くるくるドライヤーのほうがリーゼントが作りやすいことを教わった、そこで、くるくるドライヤーを早速買った、と述べています。なるほど、それなら最初は同期生にリーゼントを作ってもらっていた理由もつじつまがあいますね。

あれ? αの主張する4月13〜14日ころと、原告がくるくるドライヤーを買った4月13日は近いですね? αは、原告が買ってきたくるくるドライヤーを、「Eのものを盗んで持ってきた」としたい(もしくは勘違いした)、のではないでしょうか?

ちなみに、E証言(H22.3.18)と被害届け(H20.5.28)は大変興味深いです。Eは、証言や裁判直前の陳述書(H22.3.2)では、ガイダンス中(平成20年4月12日から16日)にドライヤーを失くしたと主張しています。「このときなくなったのは間違いありません」とまで。しかし、ドライヤーを失くした直後の被害届では、失くした時期を「4 月下旬」と書いているのです。4月12日から16日は、下旬じゃないですよね?

失くした日が、途中でガイダンス中に変わるのは、αが「入寮後数日で原告はくるくるドライヤーを持ってきた(=盗んで来た)」 と言い出したからではないでしょうか。

でも4月13日はどう考えても下旬じゃない。被害届が書かれたのは5月28日、まだEと原告の仲が良かった頃であり、原告が盗難の犯人だと決めつけられていなかった頃です。原告は、Eと一緒にドライヤーを一生懸命探しています。このときの記述のほうが正確でしょう。それを、後から原告が盗んだことにするために、全く別の、原告が買ってきたドライヤーに結び付けるために、失くなった時期をガイダンス中と変更したのではないでしょうか。

Eはこうも証言しています。「αが言うのは、その、αはずっと一緒の部屋だったので、最初から(原告はドライヤーを)持っていなかったと言っていました。」…αに言われたことを、そのまま信じてしまったんですね。

Eはドライヤーをなくした直後、原告に相談し、一緒に探しています。「全力で、私と一緒に捜してくれました」(E証言)。しかし、6月15日に原告が盗んだということになり、捜してくれたのはカムフラージュだと思うようになったそうです。原告からすれば、2204号室に誰かが置いていって大勢が使っているらしいドライヤーが、一か月以上前に一緒に捜したEのものだとは想像もしませんから、カムフラージュも何もないわけですが。入寮当時から仲良しだった原告のことを信じ続けるわけにはいかなかったのでしょうか。

なお、Eは2204号室にはほとんど行かないと証言しています(αも同様の証言)。一体誰が2204号室に持ってきたのでしょう。また、4月下旬になくなってから、6月初めまで、どこにあったのでしょうか。誰かが原告を陥れるためだけに細工したのでしょうか? もしくは他人のものをよその部屋に移動することがしょっちゅうあったか。。。とすると、やはり物が失なくなったりするのは日常茶飯事だったということです。

また、本当に同じものだったのかという疑問も残ります。確認したのは型番と製造年だけとのこと。製造番号まで特定できなければ、同じものとは言えないのではないでしょうか。

<ハンガー>
αのハンガーを原告が盗んだ、と問題になった件。

「αさんのハンガーと私のハンガーが類似しており、自分がはじめに何本持っていたのか分からず、本数が増えていることにも気が付かないで間違えて使用していたかも知れないと話しました。(中略)注意されれば謝ってお返しできたと思います。(中略)こんな些細なことが同室で年上のリーダーから学校に報告され、退学理由にされていることが信じられません。」(原告陳述書 H20.12.26)本当に、信じられません。間違えて使ってしまうのは、よくあることではありませんか。

一方、αは「平成20年6月初めころ、原告は、私の白いプラスチックのハンガーを自分のベットの上の棚の取っ手のところにかけて、使っていました。私は、そのことに気付き、同室だからと思ったが、断りなく使うのはどうかと思いました。(中略)原告の使っていたハンガーと私のハンガーは全く似ていません。」(α陳述書 H22.3.3)

神経質すぎやろーーー。「どうかと思う」のは、間違って使ったものを「盗んだ」と言う、その行動です。「それ、私のだよ」と言えば済むでしょうが。

ちなみに、音楽学校側の書類では、6月15日に発見された盗品だとしていますが、原告の陳述書(H20.12.22)では「6月某日ハンガー事件」と見出しがついており、6月15日以前にαが学校に「盗難だ」と報告したとあります。音楽学校側はまとめて記載したのでしょう。また、退寮後にも、ハンガーが一つ発見されています。→事件の検証 13.退寮後に見つかったもの

<ブラウス>
Uの夏物ブラウスがなくなって、原告の部屋から出てきたという話。

Uと同室のRいわく「Uさんは音楽学校で夏物ブラウス(サイズL)を支給され、何日か紙袋に入れたまま予科ルームに置き、その後、寮室に紙袋を持ち帰り、衣替え(6月1日)の日の前日(5月31日)に夏物ブラウスがないことに気がつきました。」「6月14日、私とMさんと原告とαさんが、原告の寮室で(中略)雑談などしていました。すると原告が自分のクローゼットを開けて何かをしだしました。偶然その時、私は、クローゼットの中に、未開封でビニールにはいったままの夏物ブラウスが無造作に置いてあるのを見ました。夏物ブラウスのエリのところには大きくサイズを書いたタグがついてあったため、その時にサイズも見え、それがUさんがなくしたと言っていたものと同じLサイズでした。」「原告に支給された夏物ブラウスはLLであったため、盗まれたUさんのものであることが確認されました。」(陳述書H22.3.2)

だからと言って、原告が盗んできたとは言えません。誰かが間違えて置いてきてしまった可能性もあります。原告は、自分の部屋に大勢の生徒がやってきて、物を置いていくのが普通だと思っているから、疑問には思いません。または、誰かが意図的に置いていくことだってできるわけです。

また、予科は本科から、サイズなど関係なく、いろいろなものを買わされるそうです(→13. 退寮後に見つかったもの)。原告が買わされたものの中には、ブラウス2着もあったと、原告母親の陳述書(H21.2.26)にあります。Uのものだと考えられていたブラウスは、じつは本科から買わされたものだったかもしれません。

ちなみに、Uは「朝も夜も、しつこくブラウスがなくなったという話を繰り返す」(R陳述書H22.3.2)し、原告は他の生徒から「Uにあやまれ」と要求され続けます。

<プリント>
原告のかばんからαの演劇プリント(台詞が書いてある紙)が出てきたということで、原告がそのプリントを持っていた現場を見たとFが証言しています。

「(授業前に)何気なく原告の演劇プリントを観ると、演劇プリントの上のあたりの、本来は名前を書くところに、スマイリーマークが書いてあり、その横に「覚えるのだ」と書いてありました。それを見た時「だしちゃん(α)のじゃないかな」と思いました。それで、「これ○○(原告)の?」と原告に聞くと、「うーん」と言いました。(中略)私は、原告がαさんのプリントを持っていたという話を、αさんがしていたときに、αさんにこの話をしました。」…マークだけで誰のものか判別できるのでしょうか??

原告は「盗難されたという演劇教材プリントがどのようなものなのか、私は全く知らされていませんでした。答弁書の内容は初めて聞くことです。(中略)他の人のボールペンでの署名などの事実は全く知りません。」(H20.12.26陳述書)と主張。なななんと、プリントが盗品扱いになっていたことを、仮処分まで知らされていなかったのです。

さて肝心のαは「カバンの中の連絡ファイルの中から、演劇プリント3部が発見され、そのうちの1部には私の名前が書いてあり、私のものであることがわかりました。(中略)もう1部にはEEさんの筆跡の書き込みがあった」(H22.3.3陳述書)と主張しています。かばんは2204号室に置きっぱなしなのだから、いくらでも仕込むことができますよねえ。スマイリーマークをα以外の人が使うことだっていくらでもあるでしょう。

F証言のポイントは、すでにαが「原告が私のプリントを持っていた!」と主張している状態で、「そういえば」と話をしたことです。αによって「原告に関することはなんでも報告するように」という指令が出ていたことが、コンビニ事件に関連して明らかになっています。これもまた、そうした「原告は異常である」という前提の上での発言なのではないでしょうか。全員が「原告は異常である」ということに同調しなければいけない雰囲気であれば、どんなことでもそれにつながって見えてしまうのではないでしょうか。

<食券>
原告のかばんから他の生徒の名前が書いてある食券が大量に出てきた、と問題にされました。

Fは「誰かの部屋に入ったときに、財布を出したり、食券を出したりしたことはないです。」(陳述書)つまり、忘れていったものではない、と言います。しかし、学校で誰かが落としたものを、原告のカバンにこっそり入れる、ということはできますよね。寮の部屋でも予科ルームでも、かばんをみんなして置きっぱなしにしているのですから、落としたものを入れたり、入っているものを盗ったりすることは、いくらでも可能です。 原告はこれについても、仮処分で初めて聞いた、と主張しています。(H20.12.26陳述書)

<黒帯>
平成20年5月25日、すみれ募金の着付けのときに、Kの袴下黒帯が失くなり、原告の退寮後に原告の部屋から出てきました。

Kは、予科ルームで袴のしつけ糸を15分ぐらいかけてとっている間に失くなった、と言います。「みんなが同じように予科ルームで着物を包んでいた紙を広げており、重なったりしていたので、他の生徒の広げた紙の下に入り込んだのかと思いました」(陳述書)Kのロッカーの隣が原告だったことから、原告が盗ったのだと推測されたのです。普通に考えれば、予科ルームが散らかっていて失くなった、と判断するべきところでしょう。

怖いのは、それが12月の退寮後に原告の部屋から出て来たということです。原告が盗んだのなら、退寮までに散々あった「捜索」で発見されているはずですから、原告が盗んだとは考えにくい。むしろ、予科ルームに落ちているのを誰かが見付けて拾って(もしくは盗んで?)、12月まで、原告を陥れるためだけにずっと持っていた、と考えられます。誰なの!? 怖い!!

<ボイスレコーダー>
Kのボイスレコーダーが二つ失くなったという件。

6月15日の捜索で一つ目が「発見」されています。これは元々壊れていたので、Kはあまり気にしなかったとのこと。

二つ目はなんと、原告退寮後に原告の部屋から発見されます。しかも6月15日の大捜索の後に学校職員が撮った2204号室の写真に映り込んでいるというのです。袴下黒帯と同じく、原告の一人部屋は捜索されまくりなのですから、隠しおおせるわけがありません。ということは、やはりこれも、6月15日に仕込んで、12月まで持っていた人物がいるということでは?

<MDプレーヤー>
Rのマイク内臓MDプレーヤーを、原告が盗んで使っていた、という件。

Rは「原告はマイクを差し込むタイプの物を使っており、私はマイクが内臓された物を使っていました。ですが、6月15日の後、いつかは覚えていませんが、原告は、自分は入学当初からこれ(マイク内臓された物)を使っていたんだと言いました。」

原告は「MDプレーヤーははじめマイクの内臓されていないものを使っていたのですが、みんな内臓のを使っていたので自分も買いに行きました。2台持っていたことになります。」と証言します。

ドライヤーの話と似ています。原告が新たに買った2個目を、言い分も聞かずに「盗んだ」としてしまうのです。結局、RのMDプレーヤーは見付かっていないとのこと。盗難続きで、疑心暗鬼になるのも仕方ないかもしれませんが、「盗んだ」と決め付けるのもどうかと。

<化粧水>
原告が、FFの化粧水を盗んで使っていた、とされた件。原告の部屋の棚にFFの化粧水が置いてあったからです。

αは陳述書では「化粧水については、FFさんが、私の部屋でなくした物でした。」と主張し、証言では、6月15日の何日か前から原告の棚のところに置いてあった、FFがそこに置いていったということはない、と答えています。

つまり、FFが2204号室に持ってきたものを、原告が勝手に自分のものとした、すなわち盗んだ、それで、自分の棚に置いていたという主張です。

一方、原告は「この化粧水は泊まりの常連のFFさんが私のカラーボックスに置いていたものです。」(H20.12.26陳述書)と主張。置いてあったものなら、盗んだとは言えません。

いろんな生徒がやってきて泊まって、物が散乱しているような状態の部屋です。ましてや原告は2204号室にほとんどいないのですから、もはや自分の部屋とは言えないぐらいなのです。泊まりに来たFFが何気なく棚に置いたり、もしくはFFが忘れていったものを誰かが何気なく棚に置いたりすることのほうが自然です。原告も、他人の物が自分のスペースに置かれているのは日常茶飯事だから、いちいち申告しないほうが自然でしょう。

ちなみに、音楽学校は「何日間も棚においていたこと。誰かが持ち込んだとは考えられない。」と主張しています(H20.12.19答弁書)。おやおや、FFがこの部屋に持ってきた、っていうのはαが述べていることですよ? FFが持ってきたうえで、誰が原告の棚に置いたかが問題なんです。「この部屋には毎日大勢の生徒が集まり、泊まっていたという実態、私は他の部屋にいたということを学校はなぜ分からないのでしょうか。」(H20.12.26原告陳述書)実態をよく知らずに、委員から「盗難だ!」と言われればそのまま「盗難だ!」と思い込み、前後関係を把握していないことがバレバレです。

<ほかに「発見」されたもの>
日焼け止め、ボディファンデーション、下着、汗ふきシート、ゴムひも、封筒、パン…。 原告の部屋から「発見」された物には、被害届に載っていない日用品が多数ありました。原告いわく「私が持っているか、必要でない物をなぜ私が盗むのでしょうか。特定の生徒の物なのでしょうか。私には全く分からないことです。」(H20.12.26陳述書)。全くです。

おそらく、雑魚寝のついでに忘れていったものがほとんどなのでしょう。仕組んだ物もあるかもしれません。 必要のない物を「盗んだ」ことにしたいのは、精神病の根拠になるからです。必要でもない物を、衝動的に盗んでしまうのは、いかにも心の病気です。

音楽学校は、被害届に書かれていない日用品について、下着などは恥ずかしいから被害届を出さなかったんだ、と主張していますが、そんな乙女心を思いやる気持ちがあれば、原告の部屋で見つかった下着類を男性職員のみで写真撮影するような真似をするでしょうか? 単なる言い訳です。

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