宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) ポイント解説

10. 友人を一人づつ剥いでいく手口

今回のいじめは、トウシューズに画びょうを入れるというような子どもっぽいやり方ではありません。裁判記録から、その実態が詳細にわかりました。→細かい事件については「各事件の検証」

怖ろしいのは、原告と仲良しの生徒を、順番に剥いでいく行為です。

生徒たちの証言で予想外に多いのが、「原告と最初は仲良しだった」という発言。最初は仲良しだった生徒が、要所要所で登場するのです。

<盗品の持ち主として>
まずは、ドライヤーを盗まれたとしたE。原告は、同室のαのもとに大勢が集まるため、部屋に居づらく、毎日、Eの部屋に泊まりに行っていました(ちなみに、Eと同室は、αと仲良しのY)。

しかし、6月15日に、原告とαの部屋からEのものと思われるドライヤーが「発見」されて以後は、疎遠になってしまいます。

「(原告代理人)あなたにとって原告は信用がおけない人、そういうことになりますか。」「(E)その当時は本当に仲がよかったので、そういうふうには思いませんでした。」「(原告代理人)では、いつからそう思ったんですか。」「(E)いろいろ盗難事件が起きたときに、そういうことがわかって、私はとてもショックでした。」(E証言)誰よりも信頼していた人が、ドライヤーをきっかけに離れていってしまいました。

ちなみに、裁判でEは当初、「原告は自分の部屋に毎日泊まっていた」と証言しました。しかしその後、αが「原告が自室にいなかったのは、週に2〜3日だけ」と証言したため、それに合わせて訂正の陳述書の提出しています。αとEは口裏合わせをしていなかったんですね。最初から最後まではめられて利用された感があります。

<万引きの監視役として>
コンビニ万引きを監視したGG、EEも、万引き事件があるまでは、一人部屋に隔離された原告を訪ね、毎日一緒に帰るほどの仲良しでした。「元々、仲は良かったんですが、余り原告がいつも部屋にこもっていたので、気になって、毎日夜に、学校が終わった後、ずっと原告の部屋に行っていたのと、いろいろ相談を受けていました。」(EE証言)「けっこう一緒に帰っていたりとか、それ以前は、休日の外出なども一緒にしていましたし、寮でもけっこう話していたので、普通に仲良くしていました。」(GG証言)

にもかかわらず、αに指示されて、監視を引き受けます。原告代理人が「あなたは当時、なぜ、あなたとGGさんがそういうこと(監視の意)をしたのか、あるいはさせられたのか、考えましたか」と問うと、こう答えています。「考えたことはありません。(中略)ただ、事実を知りたくて、私とGGさんは行きました。」考えようよ!!

友人が、盗難の被害者や目撃者になれば、その友人は原告から離れざるを得ない。以前仲良しだった人が敵側に回れば、原告のダメージが大きい。友人でもなんでもない生徒が行うよりも、もっともっとひどい。恐ろしいほど、巧妙です。

<個人で心配していても>
一人部屋に隔離されていた原告を訪ねていく人は、それなりにいました。原告の母親のメモには、9月上旬に、AAが心配してメールをくれたこと、Oが心配して部屋を訪ねてきたこと、祖母の家に連れていったこと、MMが部屋を訪ねてくれたことが記されています。しかし、9月23日にOは「これ以上悪名ひろめないでね」と書いたメモを渡し、10月にはAAが原告の寝ている姿を写メで回し、MMは10月30日の監禁で見張りを担当したり、と、次から次へと味方ではなくなっていく様子がうかがえます。

個人個人では仲良くしようとしても、全体の流れには逆らえないということかもしれません。一番委員(α)主導の話合いでは、原告一人が孤立する形になってしまうのでしょう。多数派と違う意見を持つ者に対して心理的圧力を加える、「同調圧力」です。原告の陳述書(H22.3.31)には「いつも委員が一緒で、とても強い言葉で非難される」とあり、委員が高圧的な態度だったことがわかります。他の同期に対してもそうだったことは容易に想像がつきます。

原告に「かわりに洗濯をしてあげる」と言ったZは、原告が退学させられる直前まで、休日に一緒にでかけるほどの仲良しでした。ですから、当初は好意で洗濯を申し出たとしか思えません。しかし、実際に原告が洗濯を依頼したら、翌日、αとRが登場して「洗濯を頼んだでしょ」と詰問される。Zもその場で「日曜日にしかできないよね」と発言。最後の味方を失ったこの日の翌日に、実家に強制送還されているのは、偶然とはいえなんとも象徴的です。

<被害と加害の重層構造>
こうやって原告の味方につき続けることができなかった生徒たちを、愚かというべきか、仕方が無いというべきか。Fのように、当初、盗難の犯人だと疑われていた生徒が、最終的には「原告がプリントを盗んだ」と言って証言に立つ。96期生の中にも被害と加害が重層的になっていることが、悲しいです。

これほどまでに人心を動かすことができるのは、ある意味すごいことかもしれません。一体誰のシナリオなのでしょうか。

ちなみに原告はαについて、「演技上手で、先生との面談でいつも「原告のせいで私たちが困っている」と泣くようにして訴えるのです。」(H20.12.26陳述書)と記しています。また、コンビニに関する追究で、「やってないと言うならGGさん、EEさんの目を見て、「嘘をついているでしょ」と言いなさい」仲良しだった二人にそんなことを言えないとわかっていて、強要しているのです。

これらの手法が、二度と使われないことを、使われたとしても周囲が気づいて口車に乗らないよう、切に祈ります。

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