宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ) ポイント解説

11. 警察との癒着 不正に入手した証拠

平成21年12月17日の第一回目公判で、音楽学校が「コンビニの防犯ビデオを証拠として提出する」と言ったことは、驚きでした(注)。なぜなら、仮処分中の原告の陳述書では、原告が「防犯カメラを見てください」と懇願したのに職員から拒否されたことが書かれているからです。また、原告の母親がコンビニに相談したところでは、「防犯ビデオは警察しか見ることはできない」との返事でした(原告の母親のメモによる)。

では、なぜ音楽学校は防犯ビデオを入手できたのか。

<あってはならない防犯ビデオが、警察にあった>
裁判記録には、平成22年1月4日付け(つまり、第一回目の口答弁論期日のあと、年明け)で、宝塚警察署長から神戸地裁宛の「回答」が綴られています。「ビデオテープの送付には応じられない」とあります。続いて、1月5日付けで宝塚警察署刑事課から、「本日ローソンストア100宝塚南口駅前支店に返却します。(中略)被害届けは出ておらず、取り調べをしておらず、事件として立件していない。」という文書も綴られています。

ちょっと難しいですね。本訴になったとき、ビデオテープは警察に存在していた。裁判所から「音楽学校から警察にあるって聞いたんだけど」と提出依頼があった。警察は、コンビニに急いで返却した。そしてコンビニから裁判所に提出された。つまり、このビデオテープは、本来警察に存在してはいけなかったということなのです。

そもそも防犯ビデオというのは、コンビニが被害届を出して、警察に提出して調査してもらうものです。そして警察が事件として調査する。ですから、第三者である音楽学校は、原告やその母親と同じように、見たいと言っても本来は見ることができません。しかも、防犯ビデオというのは1週間から2週間で上書きされるものです。

なのに、被害届も出ていないのに、事件から一年以上たっているというのに、映像が警察にあるのはなぜか。そして、音楽学校がそれを知っているのはなぜか。

<音楽学校は保身のためにのみ警察に働きかけ、そして逃げる>
つまり、事件直後に、音楽学校が地元企業の圧力で警察に依頼して、コンビニに提出させたのです。コンビニは原告側への回答で(H22.3.5)で「宝塚警察から当時の店長×が店内防犯ビデオ提出の捜査協力の依頼を受け協力した」「万引きの事実が確認できず捜査は打ち切られた旨(中略)聞いている」と明らかにしてます。つまり、音楽学校は「防犯カメラを見てください」という原告の懇願を踏みにじっておきながら、自分たちの名誉を守るためだけに不正を働いていたのです。そして、警察はビデオテープを放置し、返却を忘れていた。

ちなみに、この件について追究された音楽学校側は、警察が勝手にやったと言い訳しています。「警察は防犯カメラのビデオを手に入れたが、それはあくまで警察の独自の立場からであった。」(H22.3.15準備書面(4))実際は、樫原事務長はビデオ入手直後に、警察に呼ばれてビデオに映っている生徒達の名前を特定しています(生徒達が、コンビニでの自分の動きなどを詳細に陳述書に書けたのは、樫原事務長がビデオを見た結果をもとにしている(ひょっとしたら事務長が陳述書を作成した!?)疑いがあります)。それすらも、「警察の独自の立場」なのでしょうか??

<財布の件もズブズブ>
警察との癒着はこれだけではありません。劇場で拾った財布の件ですが、普通、拾得物は会計課が扱います。なのになぜか、財布の持ち主に連絡をしたのは少年課でした。音楽学校は最初から、原告が盗んだという前提で話をすすめていたのではないでしょうか。そうでなければ少年課を呼ぶ必要がありません。

そのうえ、財布の持ち主が少年課に説明した内容が、樫原事務長に筒抜けでした。なぜなら、事務長が財布の持ち主に最初に連絡を取ったのは平成21年1月9日(「財布の持ち主への電話聴取書」H21.1.10、財布の持ち主の証言による。)なのに、すでにH20年12月20日の音楽学校側の答弁書に、財布の持ち主がどの席に座っていたか、どのような動線で客席に向かったかなどが詳細に書かれているのですから。

これが癒着でなくて何なのでしょう。地元の大きな企業というだけで協力し、弱者の味方にはならなかった警察にも、失望を感じざるを得ません。

(注)最初に言い出したのは、仮処分中の平成21年6月5日。「多分警察にある」と音楽学校が言い出したところ、裁判所に「多分ではダメです。時間切れです。」とすげなく言われ、引っ込めたそうです。それを本訴では「切り札」として出してきたのでしょう。

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