宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ)

Wさんのブログが意味するもの

<ブログ発覚>
この裁判が本訴になって約一ヶ月後の、平成21年12月3日、宝塚関係の大手掲示板の裁判関連スレッドに、96期生のブログURLが貼られ、大騒ぎになりました。

ブログの主はWさん。掲載されていたのは、画像つきの日記ですが、音楽学校生の日常がネットで、画像とともにファンの目にさらされたのは、初めてのことでしょう。これまでファンがイメージしていた、規律でがんじがらめの学校生活とは、かなり違っていました。

そのため、宝塚ファンの中では「幻滅した」という人が多く、また「こういう感じだとは思っていたけれども、表に出すのはまずいよね」という人もいました。

さらに、日記の中に、原告のための話し合いで夜遅くまで拘束されるなど、疎ましく思っている、というような記述があったため、それまで裁判について「どちらが正しいかわからない」と判断しかねていたファンも、「本当にいじめがあったんだ」と考えるようになりました。

<いじめの主犯?>
宝塚のイメージをそこねる画像と、いじめがあったという記述。この二つがネット上で散々話題になった結果、「Wさんがいじめの主犯である」という噂が流布するようになりました。

しかし、果たしてそれは真実でしょうか? 裁判の経過をきちんと追っていけば、それが間違いであることがわかります。

<裁判でのWさん>
平成22年3月17日、本訴の最初の証人尋問で複数の生徒が、コンビニ万引きの件に関して「原告が万引きしていると最初に言い出したのはWさんである」と証言しました。

このことを知ったWさん(と両親)は、原告代理人に連絡を取ります。じつは、Wさんはブログ発覚の翌日に自宅待機させられ、その後、退学処分にすると脅されて、年末に自主退学していたのです。自分は万引きを示唆などしていないということを主張するために、原告代理人に連絡を取ることにしたのでした。

Wさんの父親は、裁判で証言してもよいとまで申し出ましたが、それは裁判所から「直接は関係ない」と却下。そこで原告代理人は急いでWさんへの質問事項をまとめ、Wさんが回答し、陳述書を裁判所に提出したのが、3月31日。二回目の証人尋問の前日でした。

以下、Wさんの陳述書の引用を用います。

<いじめの主犯ではないどころか、いじめていない>
「平成22年3月5日に○○さん(原告)とお母さん、私と両親が△△弁護士会の会議室で直接お会いして、ブログの書き込みで迷惑をかけたことを謝りました。○○さん(原告)からは、私からいじめられたという認識はないし、気にしないでください。むしろこちらがご迷惑をおかけしたかも知れない、といった温かい言葉が返ってきましたので、仲直りができたと思っています。」

「「もう同期じゃない」「かばいきれない」「ふざけるな」など、みんなが独り言を言うように、次々と言っていました。私は一言も言っていません。

私は○○さん(原告)が万引きをしたなどと言っていません。実際私は○○さん(原告)が万引きしたこともみていません。」

つまり、Wさんは、暴言を吐くなどのいじめ行為はしていないと原告に認められています。しかも、ブログのことで原告にちゃんと謝罪しているのです。

また、このようにも書いています。「(質問「ほんとムカツク もう限界 あ 彼女修学旅行行かないって 死ぬほど嬉しいわ」という内容を書き込んだのは何故ですか。)→この頃は私だけでなく皆が精神的に限界であったことは確かです。この文章は、私も度を越えていると思います。その時は、せっかくの一大イベントである修学旅行を心から楽しめないのは絶対嫌だという思いがありました。」

直接のいじめ行為をしていなかったWさんですらも、連日の話し合いで疲れ、その原因である原告を疎ましく思う気持ちを持っていたことがわかります。同期全体に、そうした雰囲気が蔓延していたのです。

<ネット発信は大勢がしていた、つまりネットリテラシー教育がされていない>
「このブログは妹や数人の同期とやっていた限られた参加者のブログと認識しており、決して第三者へ公開するつもりも全くありませんでした。私としては当時、同期全員が言っていたことをメモ的に書いたつもりです。」

「同期生のほとんど(以下、20名近い生徒の名前を列挙)がmixiというインターネット上のサイトに参加していたのは事実です。そのブログの中で日々の記録を綴ったり、画像を載せている人もいました。こうしたことから、自分も軽い気持ちで始めてしまいました。」

つまり、ネットで発信していた生徒はほかにもたくさんいたのに、音楽学校は生徒にネットリテラシー教育を何もしていないのです。10代の学生、しかも芸能人候補です。ネットの怖さを教えるのは、そもそも学校の義務ではないでしょうか?

<お行儀が悪いのも全員>
「ブログの写真については、自分で撮影した写真だけではなく、寮内や音校内で同期生が撮ってメーリングや直接自分宛に送られたものも多くあります。」

ブログに掲載された写真には、学校内でWさんが写っている写真がたくさんあります。ということは、他の生徒が撮影したものが多数含まれているということです。また、Wさんが同期生を撮った写真もたくさんあります。お行儀に関しては、Wさんと同期生は全く変わりません

10代の学生、しかも芸能人候補です。お行儀が悪いのは、そもそも学校の責任が大きいのではないでしょうか?

他の同期とさして変わらないネット発信やお行儀、それでいていじめに直接は関与していない。なのに唯一ブログがさらされたというだけで退学、というのはあまりにもおかしな話です。

<その後のWさん>
自主退学は不当だ、ということで退学の取り消しと復学を希望し、原告代理人とは別の弁護士に依頼して、平成23年12月1日付で本科に復学。98期生徒と一緒に文化祭に出演しました。Wさんは平成24年3月に音楽学校を2番という優秀な成績で卒業し、歌劇団への入団を希望しましたが、音楽学校・歌劇団が認めず、夢は叶いませんでした。(現在は舞台で活動しているそうです。)

Wさんの陳述書(H21.3.31)には、こう書かれています。

「確かにブログをやっていたこと自体は反省しなければならないにしても、退学までさせられる必要があったのか、夢を諦める必要があったのか、についてはまだ自分の中で整理できていません。

一方、96期生の中で暴言を吐きまくっていた生徒は、反省の弁も謝罪もなく、舞台に立っています。学校責任者も更迭されていません。

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