宝塚音楽学校96期裁判の記録(全まとめ)

検証! 間違いだらけの
『ドキュメントタカラヅカいじめ裁判―乙女の花園の今』

平成22年11月に、この裁判についての本『ドキュメントタカラヅカいじめ裁判ー乙女の花園の今』が出版されました。ネットではなく本ということで、多くの層に事件のことを知らしめました。また、本であるということで信憑性を感じた方も多いでしょう。確かに、そうした役割は果たしています。

しかし、宝塚そのものについての興味本位の説明が多く、この事件そのものの原因や背景を掘り下げるものではありません。「宝塚ってきらびやかだけど、やっぱ変な世界なんでしょ?」と思っている一般の人向けです。発行元の鹿砦社は『タカラヅカおっかけマップ』で歌劇団と裁判になったこともある出版社ですので、訴えられることも覚悟なのでしょう。

そのため、ずさんな記述で、間違いが多々あります。また、仁義にもとる箇所も多々あります。

<原告>
●「原告は洗濯機使用の際に名前の記入や、洗濯が終わった後のメーリングリストでの通知などを忘れるなど数々の違反をしたことを認めている」(p23)とありますが、あくまでも音楽学校側の主張です。原告は認めていません。原告は、自分がミスをしたのは一度だけ、多くの生徒が多数の違反をしていて、自分が洗濯機の使用禁止になったあとも洗濯機の混乱は続いていた、と主張しています。

そもそも、洗濯機のルールは非現実的なものですし、誰も把握していないルールがあったりするのですから、原告だけが頻繁に違反をしていたとは考えられません。

●原告が自発的に「精神科に通ったことがある」と言い出したこと、その後、αが「だったら仕方がない」と優しく声をかけ、みんなで見守ることになった、ということ書かれていますが(p29)、原告は強く否定しています。誘導尋問で無理矢理そう言わされたのです。深夜におよぶ話し合いで疲れがピークに達したときに、まずαに「病気でやったの?」と聞かれ、「そうかもしれない」と答えさせられたところ、さらに質問攻めになり、「精神科に通ったことがある」と言わされました。→詳しくは「事件の検証 3.「精神科の通院歴がある」はどこから出て来たのか」

●図書室の本がなくなった件で、原告の部屋が捜索され、本が出てきた、と書いてありますが(p118)、原告は本は出てきていないと主張しています。→詳しくは「事件の検証 10.図書室の本、監禁」

<Wさん>
●「Wさんが「原告が万引きをしている」ということを委員のαに告発」(p40 p94にも同記述あり)とありますが、Wさんは「原告が万引きをしたなどと言っていません」と否定しています。→詳しくは「事件の検証 7-2.コンビニでの万引き捏造は誰の発案か」

●Wさんの陳述書(原告代理人の質問に対する回答)について、「学校側は、(中略)強く反発したため、結局は証拠採用とはならなかった。その中身はというと・・・とても気になるところだが、封印されてしまっている。」(p107)とありますが、間違いです。甲オ15号証という証拠番号がついて、証拠採用されています。しかもこの本には、実際には回答書を参照しなければ分からない内容(退学日付や、他の96期生もmixiをやっていたことなど)が書かれていて、矛盾しています。→詳しくは「Wさんのブログが意味するもの」

<α>
首謀者αについて「相当なプレッシャーがあったのでは」(p68)と1ページだけ、あっさりと書き流しているのに、Wさんについては写真をたくさん掲載して14ページも詳述しているのは、全体像を全く把握していません。

●コンビニ万引きについて「報告を受けたαも、なんの証拠もなくEEとGGの証言を鵜呑みにし、原告を万引き犯に仕立て上げたのである。」(p41)とあり、EEとGGが自主的に監視したように読めますが、EEとGGに「原告が万引きをしているから監視するように」と指示したのはαであり、そもそもがα主導の監視です。→詳しくは「事件の検証 7-2.コンビニでの万引き捏造は誰の発案か」

<裁判記録をきちんと読んでいない>
●コンビニの防犯ビデオに、サラダを取ったことが映っている、と書いてあります(p45)が、サラダの位置がうつる防犯ビデオは、存在しません。詳しくは→「事件の検証 7-3.コンビニ再現ツアー」

●1回目の仮処分で「授業を受けることを拒絶してはならない」が決定されたと書いてありますが(p151)、正しくは2回目の退学処分で追加されたものです。(1回目は「生徒としての地位保全」のみ)

●「神戸地裁に音楽学校は起訴命令申立の訴状を送った」(p157)は意味不明。「仮処分に従いたくないから本訴で争おうぜ」が起訴命令申立で、それを受けて原告側が「じゃあ仕方ない、訴えます」と神戸地裁に送ったのが訴状です。詳しくは→「ポイント解説 2.おおやけになったのは無策な音楽学校のせい」

おそらく、この筆者は傍聴もしていなければ、裁判記録も読んでいない(読んだとしても部分的)のでしょう。そういった姿勢は、執筆や出版の手続きにも表れています。

<ルール違反>
●原告の母親の写真が掲載されています。記者会見の際のものです。目隠しがされていますが、全身です。じつは、記者会見では「首から下だけ」という条件で撮影が行われたのです。これこそ、ルール違反です。(原告代理人も目隠しなしで斜め後ろ姿が掲載されてしまっています)

●「・・・と弁護士は言う」といった記載やストーリーは、記者会見とその後の報告会を元に組み立てているようですが、報告会で「オフレコで」と言った話も記載されてしまっています。

●巻末に掲載されている時系列表は、原告代理人が記者会見で配ったものをそのままパクっています。

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